「虚無枠」とは何か(管理人の造語です)

2021年ごろから、管理人は「どこかで観たような設定」をただ組み合わせただけに見える作品が、明らかに増えたと感じています。そして不思議なのは、そういう作品に限って、SNSでも感想をほとんど見かけないのに、気づけば第2期、第3期の告知が出ていることです。

【最初にお断り】「虚無枠」は、管理人が勝手に作った造語です。アニメ業界の公式な用語ではなく、管理人が自分で名づけた言い方です(用語集にも、当サイト独自の言葉として載せています)。
ネタにもされず、絶賛もされず、観終わっても何も残りません。管理人はそういう作品を「虚無枠」と呼んでいます。特定の作品を指す言葉でも、「つまらない作品」という意味でもありません。この記事では、「話題にもなっていないのに、なぜ続編が次々と作られるのか」を、管理人なりに考えてみます。

先に断っておくと、ここで言う虚無枠は「つまらない作品」のことではありません。作画が崩壊している、設定がぶっ飛んでいるといった作品は、突っ込みどころがあるぶん語られますし、ネタとして愛される余地もあります。虚無枠は、そうした話題にすらならず、静かに埋もれていく作品のことです。だから個別の作品名は挙げず、現象として考えたいと思っています。

この言葉を作ったのは、逆に、なぜこの言葉がなかったのか、不思議に思ったからです。おそらく多くの視聴者が思っていたことなのに、言葉にされていなかっただけだと感じています。

観る前に「知っている流れ」だと分かってしまう

チート能力を手にした主人公、ハーレム、テンプレ通りの追放・見返し展開といったものです。個々の要素はどれも悪くありませんが、それをただ並べた作品が毎クール大量に供給されると、ティザービジュアルやYouTubeの予告を観た時点で「あ、これ知ってる流れだ」と感じてしまい、視聴者が離脱してしまいます。管理人自身、序盤で切ってしまった作品が2021年以降だけで両手では数え切れません。異世界作品の場合は、YouTubeの予告PVを観た時点で、0話切りすることもあります。

追放系・悪役令嬢ものにも同じことが起きている

追放系も同じです。異世界作品系のあとに、追放系、そして悪役令嬢ものが続きました。追放系は、最初は「あ、なろう系とは別に、この手があったか」と感心しました。ところが今は、これも量産しすぎています。パーティーや組織から追放された主人公が、実は規格外の能力を持っていて、追放した側が後から後悔します。この型は痛快ですが、冒頭で追放された時点で、その後の展開まで予想がついてしまいます。

悪役令嬢ものも、同じことが起きています。乙女ゲームの悪役令嬢に転生し、破滅フラグを避けようと動いているうちに、気づけば周囲の人たちに好かれていきます。この型自体は、立場の逆転や先を読む面白さがあって魅力的ですし、実際に楽しめる作品もあります。ただ、同じ時期に似た導入の作品が何本も並ぶと、ビジュアルとあらすじだけでは見分けがつかなくなります。追放系や異世界チートものと同じく、「型の面白さ」よりも「またこの流れか」が先に来てしまうのです。管理人が楽しめたのは、初期に放送された作品でした。そのあとに、量産型が続いたからです。

なぜ続編が続くのか:管理人が考える4つの理由

ここからは、あくまで管理人の見立てです。業界の方の解説も参考にしながら、話題にならなくても続編が決まる理由を整理してみます。

1. 続編を決める物差しは「話題性」ではなく「お金になるか」です。アニメの続編は、面白かったかどうかだけでなく、その作品が収益を生んだかどうかで決まると言われています。実際、面白くて評判が良くても続編が作られない作品はありますし、その逆もあります。SNSで静かでも、配信の再生数や関連商品、原作の売上が基準を満たしていれば、続編は決まります。

2. アニメは原作の「宣伝」の役割も持っています。小説投稿サイト発の作品は、アニメ化をきっかけに書籍やコミカライズの売上を伸ばす狙いがあります。原作のストックが豊富なので、続編を作る材料にも困りません。ゼロから新しい企画を立てるより、すでに原作がある作品の続きを作る方が、リスクが読みやすいという事情もあるはずです。

3. 海外の配信市場が、収益を支えています。近年の深夜アニメは、海外の配信やSNS、音楽、商品化まで見据えて企画されており、収益の面でも海外市場の存在感が大きいと言われています。異世界ものなどは海外でも需要があるとされていて、国内で話題にならなくても、海外の配信で数字が出ていれば続編の判断材料になります。国内の空気感だけでは見えない数字が動いている、ということです。管理人は、話題になっていない作品の続編が決まったと知るたびに、「あぁやっぱりこの時代、日本よりも海外を重視しているんだなぁ」と感じることがあります。

4. 本数が多すぎて、安全な選択肢に寄りやすいです。調査会社の集計では、2023年のTVアニメのタイトル数は約300本でした。これだけ本数が多く、制作会社の業績も厳しいと言われる中で、人も枠もすでにある続編は、新しい企画より判断しやすい選択肢です。結果として、似た作品の続編が並びやすくなります。

ここで大切なのは、続編が出ていることと、視聴者に愛されていることは別だという点です。私たち視聴者が「話題になっている」と感じる基準は、SNSの盛り上がりやランキングといった見える範囲のものです。一方で、続編を決める側が見ているのは、配信や原作、商品を含めた別の数字です。この2つのずれが、「誰も話題にしていないのに続編が出る」という違和感、つまり虚無枠の正体なのではないかと思っています。

逆の体験もあります。1期を最後まで観て、「早く続編が観たい!」と感じた作品は、管理人の体感では、8割が期待どおりの出来になります。続編を待つ気持ちが自然に生まれた作品は強い、ということです。

だからといって、制作している人たちを責めたいわけではありません。作品には必ず誰かの努力が詰まっていますし、これは個々の制作陣の責任というより、業界の構造の問題だと思っています。ただ、似た作品が量産されるほど、本当に突き抜けた作品が埋もれてしまうのは、とてももったいないことです。

管理人は、利益を求めること自体は当然だと思っています。制作会社にも製作委員会にも、働いている従業員がいて、その先には家族の生活があります。給料と会社を守るために、数字の見込める続編を選ぶのは、自然な判断です。そのうえで、管理人には疑問が残ります。数字の見込める作品が並び続けることが、本当にアニメ業界の発展に貢献するのかどうかです。これは答えを持っているわけではなく、管理人個人の疑問です。

視聴者にできること

管理人にできることは多くありませんが、自分の観る作品を自分で選ぶ工夫はできます。脚本家・監督・制作会社をチェックする習慣は、その一つです。合わなければ1話で切ってもいいと思っています。そして、観てよかったと思った作品は、公式の配信や円盤・グッズで応援したり、感想を発信したりすることが、数字としてしっかり届くはずです。このサイトが「見逃してほしくない作品」を紹介し続けているのも、そうした気持ちからです。

参考:現代ビジネスの記事(アニメの続編と海外市場)、Business Insider Japanの記事(アニメ制作と製作委員会・配信)、アニメ制作市場の調査(2024年)。これらを参考にしつつ、結論は管理人個人の見立てです。

まとめ

正直、この記事を書くのは今まで避けてきました。「悪く言う」ことでサイトの雰囲気が変わってしまうのが怖かったのもありますし、作品には必ず誰かの努力が詰まっているという意識もあります。だから今回は、個別の作品を挙げず、仕組みの話に絞りました。ただ、良いところばかり並べるサイトより、たまにはこういう本音も見せた方が、むしろ普段のおすすめ記事の信頼度も上がるのではないかと考え直しました。

今回一番伝えたかったのは、話題にならなくても続編が続くのは、作品の人気だけでなく、お金の回り方や原作・海外配信といった事情が重なっているからではないか、ということです。続編が出ていることだけで、作品の良し悪しは決まりません。だからこそ、自分の目で選び、好きな作品を応援していきたいと思います。今後もこういう本音企画は、無理のない範囲で続けていく予定です。