6作品に共通していたこと

この6作品に共通していたのは、最初は絵柄、設定、音楽、あらすじなどのうち、1つの部分だけが強く目立っていたことです。それが話が進むにつれて、4つのバランスがどんどん良くなっていきました。観る前は期待していなかったのに、観終わるころには全部そろっている、という体験です。ただ、この体験は、1年に1作品あれば良いほうです。

管理人の感覚では、この体験には流れがあります。第3話あたりで刺さります。そして、第10話前後の展開で、この作品を観続けてきたことは間違っていなかったと確信します。これはあくまでも管理人個人の感覚で、作品によっても、人によっても違うと思います。

最初に目立っていた部分は、作品ごとに違いました。オッドタクシーと夜のクラゲは泳げないは「絵柄」、サマータイムレンダは「シナリオ」、Vivy -Fluorite Eye's Song-と僕の心のヤバイやつは「設定」、お兄ちゃんはおしまい!は「日常」です。

観たきっかけ:放送時期は、観る曜日が取れませんでした。あとからPrime Videoに表示された「あなたにおすすめの作品はこれです」をきっかけに、6作品全てと出会いました。誰かに勧められて観た作品ではありません。
1
オッドタクシー
2021年 / ミステリー・会話劇
動物たちが人間のように暮らす世界で、セイウチのタクシー運転手が乗客と会話を重ねていく作品です。観進めるうちに、乗客との何気ない会話の一つ一つが、行方不明の女子高生の事件へと少しずつつながっていきます。絵柄、設定、音楽、あらすじが、話数を重ねるごとにバランスよくそろっていきました。脚本は此元和津也さんで、全13話をかけて、散らばった会話が一本につながっていく設計に唸りました。
裏切られポイント:会話そのものが伏線になっている構成で、話が進むほどバランスが良くなっていきます。観終えたあとに、最初の何気ない会話を思い返したくなる作品でした。
2
サマータイムレンダ
2022年 / SFミステリー・タイムループ
和歌山の離島を舞台に、「自分の影が現れたら殺される」という噂が広まる物語です。主人公が時間をさかのぼりながら情報を集め、少しずつ敵の正体に近づいていく構成で、ホラーというよりも頭脳戦に近い面白さがありました。夏の島ののどかな風景と、そこで起きる不穏な出来事の落差も印象的です。話が進むにつれて、設定、絵、音楽、あらすじがきれいにそろっていきます。制作はOLMで、監督は渡辺歩さんです。
裏切られポイント:時間をさかのぼって情報を積み上げていく謎解きの面白さが、話数を重ねるごとに効いてきます。ホラーが苦手な方でも、謎解きとして楽しめる作品だと思います。
3
Vivy -Fluorite Eye's Song-
2021年 / SF・音楽
AIの歌姫が「歌でみんなを幸せにする」という使命のもとに活動する物語です。物語は約100年という長い時間をまたいで進み、時代を飛び越えるたびに、主人公を取り巻く状況が大きく変わります。歌の場面の盛り上がりと、AIとは何かを問うシリアスな物語のバランスが、話が進むにつれて整っていきました。シリーズ構成・脚本は長月達平さんと梅原英司さん、制作はWIT STUDIOです。
転機は第4話でした:第4話「Polaris Topia -我が使命は、誰を輝かせるためか-」で、この作品の核になるテーマ「AIに心が宿るのか」が、初めてはっきりと示されます。同時に、主人公の使命が「心を込めて歌う」ことだったと明らかになります。観る前は、放送前に知っていた情報が少なく、期待していなかった作品ですが、この回で見る目が変わりました。
裏切られポイント:6作品の中で、一番裏切られた1本です。歌が単なる演出ではなく物語の軸になっていて、100年にわたるスケールの物語に最後まで引き込まれました。
4
僕の心のヤバイやつ
2023年 / 青春・ラブコメ
教室の隅にいる男子と、明るい同級生の女の子の物語です。主人公・市川の頭の中で暴走するモノローグと、山田の何気ない仕草との落差がとても丁寧に描かれていて、台詞が少ない場面でも気持ちの動きが伝わってきます。派手な事件が起きるわけではないのに、二人の距離が少しずつ変わっていく様子から目が離せませんでした。制作はシンエイ動画で、総監督は赤城博昭さん、シリーズ構成・脚本は花田十輝さんです。
裏切られポイント:細かな仕草や間で見せる心理描写が、話数を重ねるごとに効いてきます。恋愛ものが得意でない方にも観てほしい作品です。
5
お兄ちゃんはおしまい!
2023年 / コメディ・日常
妹の薬で女の子になってしまった引きこもりの兄の、日常コメディです。ゲームばかりしていた主人公が、女の子として暮らす中で少しずつ外の世界に踏み出していく様子が、思っていた以上にテンポが良く、笑える作品でした。変化に戸惑いながらも、周りの人たちに囲まれて過ごす様子が、どこか温かく感じられます。制作はスタジオバインドで、監督は藤井慎吾さん、シリーズ構成は横手美智子さんです。
裏切られポイント:主人公が少しずつ変わっていく日常の積み重ねが、話が進むにつれて効いてきます。肩の力を抜いて観られる一本です。
6
夜のクラゲは泳げない
2024年 / 青春・音楽・創作
渋谷を舞台にした、女の子たちの匿名の創作ユニットの物語です。うまくいかない悔しさや、自分には才能がないのではという迷いが丁寧に描かれていて、曲や映像が完成していく過程そのものが物語の中心になっていました。全12話をかけて、音楽も絵も物語も、バランスよく仕上がっていきます。制作は動画工房、監督は竹下良平さん、シリーズ構成・脚本は屋久ユウキさんです。
裏切られポイント:創作の苦しさと喜びを描く物語が、話数を重ねるごとに厚みを増していきます。何かを作ったことがある人ほど刺さるかもしれません。

なぜ期待値を見誤るのか

こうして振り返ると、見誤る理由はだいたい共通しています。タイトルやビジュアル、ジャンルの先入観だけで「軽く観れるもの」「自分には合わなさそうなもの」と判断してしまい、実際の中身を観ていないケースがほとんどです。脚本家・監督・制作会社をチェックする習慣をつけてからは見誤りは減りましたが、それでも情報が少ない作品や、パッと見の印象が強すぎる作品では、今でもこうした裏切られ体験が起こります。

まとめ

良いところ探しを軸にしているこのサイトでも、根っこにある姿勢は変わりません。先入観だけで判断せず、実際に観てから語りたいということです。今回挙げた6作品は、どれも「観る前の自分」を後で恥ずかしく思わせてくれた作品でした。こういう裏切られ体験があるからこそ、アニメを観るのはやめられません。